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家で飲んだ方が安い。それでも僕が週2回、クラフトビールを飲みに行く理由

家飲みより高くても週2回ほどクラフトビールのタップルームに通い、常連やスタッフとの会話を楽しむ40代男性のイラスト

「ここらじゃ見ない顔だね……1人かい?」

初めて入った立ち飲みスペースで、突然そんなふうに声をかけられた。

えっ、何このセリフ。

映画やドラマでしか聞いたことがない。しかも、ちょっとアングラな酒場に出てきそうなやつだ。

もちろん、声をかけてくれたのは怖い人ではない。

たまたま隣で飲んでいた常連さんだった。

それが、今では週に2回ほど通うようになった、近所のブルワリーとの付き合いの始まりだった。

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もともと好きだったブルワリー。でも、なかなか行けなかった

僕はもともとクラフトビールが好きだ。

近所にもお気に入りの醸造所があって、そこのビールは以前から飲んでいた。

ただ、ひとつ問題があった。

タップルームの営業日が、僕の生活リズムと合わなかったのだ。

以前は週末を中心とした営業で、仕事が終わってから立ち寄るのは難しかった。

好きなビールなのに、なかなか飲みに行けない。

そんな場所だった。

ところが、あるとき気づいた。

「あれ、金曜日も営業してる?」

しばらくすると、さらに平日の営業日が増えていた。

いつの間にか、仕事帰りにも立ち寄れるお店になっていたのだ。

特別な予定を立てなくても、帰り道にふらっと寄れる。

僕にとっては、この変化が大きかった。

仕事帰りの一杯には、閉店時間がちょうどいい

仕事が終わってからお店に着くのは、だいたい夜の8時ごろ。

遅い日は、ラストオーダーが近い時間になることもある。

だから、飲めるのは長くても1時間ほど。

でも、これがちょうどいい。

一杯飲んで帰る日もあれば、ハーフサイズを2杯楽しむ日もある。

もう少し飲みたいな、と思うくらいで営業時間が終わる。

結果的に、深酒にならない。

飲み始めるとついつい長くなってしまうお酒の席もあるけれど、ここでは時間に区切りがつく。

翌日の仕事を考えても、ありがたい。

仕事が終わったら一杯飲んで、ほどよいところで帰る。

そんな寄り道が、いつの間にか習慣になっていた。

今日は何を飲もう。毎回ちょっと楽しみがある

醸造所に併設されたタップルームの楽しさは、やっぱりビールそのものにもある。

定番のビールに加えて、時期によって違う銘柄がつながっている。

その日のおすすめを聞いてみたり、ちょっと珍しい熟成ものを選んでみたり。

気になるビールが複数あれば、ハーフサイズで飲み比べることもある。

いつも同じものを注文する安心感もいいけれど、今日は何があるんだろう、とメニューを見る時間も好きだ。

クラフトビールは、普通のビールと比べると値段が高めだ。

正直、家で飲んだ方が安い。

でも、スタッフにおすすめを聞きながら選んだり、その場で注いでもらったビールを味わったりする時間には、家飲みとは違う楽しさがある。

しかも、その醸造所は家のすぐそば。

好きなブルワリーのビールを、好きなタイミングで飲める。

それだけでも、僕には十分魅力的な場所だった。

そういえば、以前はHOPPIN’ GARAGEというクラフトビールのサービスにも夢中だった。

新しいビールが届くたびに、どんな味なのか、どんなストーリーがあるのかを楽しみにしていた。

今はサービスが終了してしまったけれど、あの頃の思い出は記事に残している。

→ HOPPIN’ GARAGEが好きだった。サービス終了後に振り返った思い出

「ここらじゃ見ない顔だね」から始まった常連さんとの付き合い

最初に話しかけてくれた常連さんとは、その場でおつまみをシェアした。

このお店は、ちょっとしたお菓子やおつまみの持ち込みもできる。

ビールを飲みながら、持ってきたものを分け合って、なんとなく話をする。

初対面なのに、不思議と気を使わなかった。

帰り際も、あっさりしたものだった。

「また来たらいるかもねー」

それだけ。

連絡先を交換するわけでもなく、次に会う約束をするわけでもない。

今思えば、あの人はこの店の「主」だったのだろう。

初めて来た客に、あんな映画みたいなセリフで話しかけられるのだから。笑

それから何度か通ううちに、ほかの常連さんとも顔なじみになった。

今では苗字くらいは知っている人もいる。

でも、連絡先は知らない。

あえて聞こうとも思わない。

だって、ここに来れば会えるから。

知っている人がいなくても、楽しい

もちろん、毎回顔なじみの常連さんがいるわけではない。

でも、それで困ることもない。

お店には明るい若いスタッフがいて、気軽に話ができる。

有名なブルワリーということもあって、遠方から訪れる人もいるし、海外からのお客さんを見かけることもある。

地元の人が仕事帰りに立ち寄る一方で、遠くからわざわざ飲みに来る人もいる。

同じカウンターの周りに、いろいろな人が集まっている。

ちょっと面白い空間だ。

気候のいい時期には外で飲むのも気持ちいいし、いつもの立ち飲みスペースで一杯だけ楽しむのもいい。

僕はだいたい、入り口近くで立って飲んでいる。

そこが一番気楽なのだ。

誰かと話す日もあれば、ビールを味わって帰る日もある。

どちらでも満足できる。

この自由さが、長く通える理由なのかもしれない。

家で飲んだ方が安いのに、家飲みが減った

自分でも少し不思議なのが、ブルワリーに通うようになってから、家で飲む回数が減ったことだ。

普通に考えれば、家で飲む方が安い。

わざわざ外でクラフトビールを飲めば、それなりにお金もかかる。

それなのに、週に何度かお店へ足が向く。

たぶん、僕が楽しみにしているのはビールだけではないのだと思う。

仕事帰りに少しだけ寄り道すること。

その日のおすすめを選ぶこと。

顔なじみの人がいたら、何でもない話をすること。

そして、ちょうどいい時間になったら帰ること。

どれも小さなことだけれど、全部そろうと、なかなか心地いい。

家で飲むビールにも良さがある。

でも今の僕には、外で過ごすこの短い時間がちょうどいい。

40代になって、こんな寄り道も悪くないと思った

若いころのお酒の席といえば、友人と待ち合わせたり、誰かを誘ったり。

飲みに行くこと自体が、ひとつの予定だった。

今は、そんなに大げさなことをしなくてもいい。

仕事が終わって、まだ少し時間がある。

今日は一杯飲んで帰ろうかな。

そう思ったら、いつもの場所に寄る。

知っている人がいれば「こんばんは」と声をかける。

いなければ、スタッフと話しながらビールを選ぶ。

飲み終わったら「またね」と帰る。

次にいつ来るかは決めていない。

それくらいが、今の僕には気楽だ。

特別なイベントがあるわけでもないし、何か新しいものを買うわけでもない。

でも、仕事帰りに楽しみがひとつ増えた。

それだけで、日常が少し面白くなった気がする。

最初に声をかけてくれた、あの常連さん。

今度会ったら、また何でもない話をするのだろう。

お互いの連絡先は、たぶんこれからも知らないままだ。

まあ、それでいい。

ここで会えるからね。