“(仮)キノ”
ちょっと心が疲れたときに読みたくなる作家さんです。
僕がいしいしんじさんを知ったのは、ちょうど社会人1年目ごろのことで「ぶらんこ乗り」という作品がきっかけ。
いしいしんじさんは、1994年に「アムステルダムの犬」という作品を発表し、2000年ごろから次々と作品を発表されています。
いしいしんじさんの魅力は、宮沢賢治を彷彿とさせるとも表現されることのある作風の作家。
幻想的な表現や神話をモチーフとしたような物語で、語り口調に似た文節を読み進めていると、次第に物語に引き込まれていきます。
子供の頃に両親に絵本を読んでもらったように、誰かに優しく読み聞かせをしてもらっているような優しく柔らかな感覚を味わえる作家さんだと思います。
数々の作品がありますが、いしいしんじ作品の中でも、外すことのできないいくつかの作品を紹介させていただきます。
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コンテンツ
初めに読むのは絶対この一冊
作家の個性や作風を知ろうと思ったら、まずは短編小説を読むのが一番だと勝手に決めてるキノです。
短編小説はボリュームが少ない分、密度が濃くなります(自論)。
いしいしんじさんの魅力がギュッと詰まっている作品が「ぶらんこ乗り」になります。
短編と言いながら、中短編みたいな感じ。
長編ほど読み終えるのに時間が掛からないので、初めて読むのにオススメです。
ぶらんこ乗り
ストーリー
ぶらんこが上手で、指を鳴らすのが得意な男の子。声を失い、でも動物と話ができる、つくり話の天才。もういない、わたしの弟。-天使みたいだった少年が、この世につかまろうと必死でのばしていた小さな手。残された古いノートには、痛いほどの真実が記されていた。ある雪の日、わたしの耳に、懐かしい音が響いて…。物語作家いしいしんじの誕生を告げる奇跡的に愛おしい第一長篇。
感想
言葉の選びかたや独特のいい回しが、さすがいしいしんじさんの作品だなぁって思う作品です。
ぶらんこが上手で指を鳴らすのが得意な弟のことをお姉さんの視点で語り紡いでいくお話。
お姉ちゃんを喜ばせようと一生懸命に書きつづった物語は、ひらがなで綴られていて、文字のひとつひとつに愛おしさを感じてしまう文面で、幼くて稚拙なようでいて、大切なことを伝えようとしている物語に胸がきゅっとなる。
切なくシュールで不思議なストーリーなのに、すごくあたたかい気持ちになれるので、何度となく手にして、読み返している大好きな本です。
どんな方にもオススメしたい一冊です。
作家のセンスを感じたいなら
作風のセンスを感じたいなら、短編小説よりもさらに短い短編作品が詰まった短編集を読むのがおすすめです。
短編集には、短編で読ませる作家のテクニックと作家のセンスが凝縮されているので、短編集を読めば作家の技量が分かります(自論)。
雪屋のロッスさん
ストーリー
さいわいなことに、雪はいずれ溶けます。はかないようですが、そこが雪のいいところです」ロッスさんは、そういって笑いました。物語作家いしいしんじが描く、さまざまな人たち、それぞれの営み。あなたは、何をする人ですか?
雪屋のロッスさん、大泥棒の前田さん、似顔絵描きのローばあさん、サラリーマンの斉藤さん…。
様々な職業のひとを主人公にした30編のショートショートストーリーを集めた寓話集。
感想
すべてのストーリーがハッピーエンドで終わるわけではないけれど、様々な職業の人の営みの断片が心に残って引っかかっています。
楽しみも悲しみも…、様々なものが同居している作品集だけど、全体を通して感じる感想は「人生の愛おしさ」
全編合わせて236Pなので、短い作品だと3ページ程度の短い作品もあるので、寝る前にサクッと読めちゃうので、枕元の書棚において読み返しをしている好きな作品です。
物語にどっぷり浸かりたいなら
短編小説も短編集も読んで、作家の魅力に引き込まれたなら長編小説にもチャレンジしたいところ。
作家の持ち味がしっかり生かされながら、作家のメッセージや問題提起が詰まった長編小説は、作家の生き方や時代背景を感じることのできる作品(自論)。
いしいしんじさんの魅力にどっぷり浸かってください。
プラネタリウムのふたご
ストーリー
だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。――星の見えない村のプラネタリウムで拾われ、彗星にちなんで名付けられたふたご。ひとりは手品師に、ひとりは星の語り部になった。おのおのの運命に従い彼らが果たした役割とは? こころの救済と絶望を巧まず描いた長編小説。(講談社文庫)
感想
だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの世界になってしまう。
この一文が自分のこころにスッと入ってきて、腑に落ちた感じでした。
インターネットが発展して、様々な可能性が広がり新しい価値を生んだ一方で、情報の速さや正しさばかりが求められて、世の中からファンタジーやウソが消えたような気がしています。
「だまされることは、だいたいにおいて間抜けだ。ただしかし、だまされる才覚がひとにないと、この世はかさっかさの、笑いもなにもない、どんづまりの世界になってしまう。」
いしいしんじさんの描く丁寧なファンタジーを通じて、かさっかさのこころにうるおいが満ちていくような暖かさを感じています。
麦踏みクーツェ
ストーリー
音楽にとりつかれた祖父と、素数にとりつかれた父、とびぬけて大きなからだをもつぼくとの慎ましい三人暮らし。ある真夏の夜、ひとりぼっちで目覚めたぼくは、とん、たたん、とん、という不思議な音を聞く。麦ふみクーツェの、足音だった。―音楽家をめざす少年の身にふりかかる人生のでたらめな悲喜劇。悲しみのなか鳴り響く、圧倒的祝福の音楽。坪田譲治文学賞受賞の傑作長篇。
感想
いしいしんじさんらしく、個性豊かなキャラクターがたくさん登場し、いろいろな事件が起こるけれど、物語が進むにつれてすべてがひとつに繋がっていいきます。
たくさんの悲しみも越えラストのクライマックスに繋がっていく。
長編小説ですが、ひとつ一つのストーリーが丁寧に紡がれているので、皆さんに読んでもらいたいお話。
いしいしんじさんの小説は本当に大好きすぎて他にも紹介したいのですが、とりあえず4つのお話を紹介させていただきました。
キノは結構本が好きなので、またいろいろと書籍紹介をしていこうと思います。
西野亮廣さんの絵本のレビューをさせていただいた記事はこちら